Y様 |ディアナコート小石川竹早(文京区小石川)
文京区小石川エリアの高台には、江戸時代、水戸徳川家や常陸府中藩の松平播磨守の屋敷をはじめ数々の大名屋敷や武家屋敷が並んでいました。明治以降は石川啄木や樋口一葉、森鴎外、夏目漱石、坪内逍遥など、文豪が居を構えたことでも知られています。
Y様が文京区に住まいを求めたのも、そんな歴史文化が感じられる街であることが大きかったそう。
「若いころに文京区に住んでいたんです。都内や海外で10回以上の転居を経験していますが、“仕事を引退したら、もういちど文京エリアで暮らしたい”と考えていました。長年の歴史のなかで培われた風情は、なににも代えがたい落ち着きが感じられます」
かつて親しんだ小石川台地ではありますが、数十年を経て変化が感じられるところもありました。住宅や交通量が増えた点も変わったことのひとつ。「現役引退後の人生を、自由にゆったり、楽しく過ごす住まいにしたい」と思っていたY様は、千石に仮の住まいを構え、じっくりと家を探しました。
「雨の日、雪の日。早朝、夕方。季節によって、時間によって、天気や気温によっても街の印象は大きく変わるもの。住んでみてはじめてわかることも多いので、購入を検討していたエリアに実際に暮らしながら、歩いて物件を探したんです」
愛犬ヤマトくんとの散歩中にたまたまディアナコート小石川竹早の看板を見つけ、すぐにモリモトに電話で問い合わせたそう。まだ建築もスタートしていない段階でしたが、マンションギャラリーにも何度か足を運び、複数の部屋を検討したなかで「広さも、間取りも、部屋の向きも、自分の暮らしに合っている」と、現在のお住まいの購入を決めました。
住まいへの高い意識は、周辺環境や立地だけではなくもちろん室内にも向けられていました。何軒もの家をご自身でデザインして暮らしてきた経験から、「どのような空間で、どのように暮らしたいか」が明確となっていたY様は、モリモトの担当者や内装の専門家と相談を重ねながらひとつひとつ具現化していきました。
Y様のお住まいは、随所にアイデアが満ちています。最初にゲストを迎えるサプライズは玄関。もともとは玄関からまっすぐに伸びた廊下がリビングへと通じていました。Y様は「それでは情緒がない」と玄関ドアの正面に壁をつくり、わざと迂回するようなつくりに変更しました。また、なめらかな動線を確保するためコーナーを丸くして、ニッチにはオブジェも置けるようにしました。
ベッドルームは「シングルベッドを2台置ける広さがあることが重要でした」とY様。ヘッドボード周りの棚やチェスト、ドレッサーなどは造り付けにしたため、すっきりとした印象です。
「ベッドルームのテレビはどうしても壁掛けにしたくて……。壁の強度やリコーダーの取り回しなど、けっこうたいへんだったのですが、なんとか実現できました」
リビングで一際目を引くのはテーブル式の囲炉裏です。天井の照明は火棚を思わせるデザインで、自在鉤を取り付けるため天井の高さや強度なども設計の段階で変更。壁にかけられた大きな書と、陶芸が趣味というY様の作品がお客様を迎えます。
「みんなで火を囲んで団らんするのは和みますからね。お客様をお迎えするリビングの壁には、書家の真下京子さんの作品をかけました。10年ほど前に見て惚れ込んでしまった<<祈雨>>をもとに新たに書き下ろしていただいたんです。雰囲気も、サイズ感もこの部屋にぴったりで、とても気に入っています」
陶芸と並んでY様が楽しんでいらっしゃるのは茶道です。十数年前に茶の湯をはじめ、「自宅でも気軽にお茶を楽しみたい」という思いから、リビングの一角には茶室も設けました。天井は網代と竹、炉を切り、中柱を立てた本格的な茶室です。ひさしもあって、まさに別世界の様相。
「茶室をつくるのは設計変更だけでは難しく、茶室建築の専門家に入っていただきました。家の中に家をつくる感覚でしたね(笑) いまはテラスに蹲(つくばい)を置きたいと思って探しているところです」
環境と利便性を兼ね備えた小石川の台地で、ゆったりとした自由な時間を満喫しているY様。愛犬ヤマトくんとの毎日の散歩でも小さな発見があり、人生を楽しみながらのびのびと暮らしていらっしゃる様子がうかがえました。
江戸時代から大名屋敷や武家屋敷などが多く、由緒ある土地柄の文京区小石川。上質な街並みと自然にも恵まれ、本来の山の手を代表する文教地区として知られている。その小石川に相応しく、気品を大切にしたシンプルなデザインで美しい存在感を創出した「ディアナコート小石川竹早」。ホワイトアイボリーのボーダータイルを施したモダンな外観や、エントランスホールの重厚な御影石の間知積みなど、住まいの本質を極めた品格ある邸宅美を築いている。総戸数75戸。2015年完成。