1/DIANA COURT上原(2006年竣工・分譲済) 2/DIANA COURT代沢(2011年竣工予定) 3.4/DIANA COURT自由が丘(2005年竣工・分譲済)
私は、デザインの作業にあたって、コンセプトという言葉をあまり使いたくありません。コンセプトという言葉からは、“机上で考えられたひとつの正解”というニュアンスを感じるからです。たとえば、素材選びを考えたとき、本物とフェイクがありますが、本物の素材に誰もが本物を感じるとは限りません。最近は、本物以上に本物らしいフェイクもありますから。ならば、本物の空間をめざして、フェイクの素材を使うことだってありうるわけです。大切なのは、正解はいくつもあって、その中から「今回はこの正解をめざそう」という姿勢や尺度だと思うのです。つまり、価値観を根底で共有するためのフィロソフィー。コンセプトが上に積み上げていくものならば、フィロソフィーは原点へ掘り下げていくものであり、それによってつくり手と住まい手が共通の認識で結ばれれば、その先に“本物の正解”が見えてくると信じています。
自然、そして文化。人間が好きなものはこのふたつだと私は考えています。だから、自然と文化を大切にした空間をつくりたい。都市の住宅、特にその専有部では自然はほとんど皆無ですが、だからこそ木や石の天然素材を効果的に使うことで、“感じる自然”をしつらえたいのです。また、文化は、住まい手がそれぞれにつくりだすものですから、空間はそれを描く上質なキャンバスでありたい。そのためには、その場所、その空間に想定される暮らし方をできるだけおおらかに包み込むようなインテリアをしつらえる。そのとき、デザイナーのエゴとしてのこだわりはナンセンスだと考えています。
藤原 益男 Masuo Fujiwara (株式会社ウイ・アンド・エフ ヴィジョン代表)
商業建築界の巨匠として、30年以上にわたり第一線で活躍してきた建築・環境デザイナー。高級分譲マンションにおける多彩な空間開発によって高い評価を獲得し、グッドデザイン賞、日本SDA賞優秀賞などを受賞。主な作品に、渋谷西武シード館、資生堂イプサ、資生堂アユーラ、神戸ハーバーランドモザイクなど。