住空間づくりで実践してきたことが
グッドデザイン賞で 評価された
まずは、グッドデザイン賞受賞おめでとうございます。
今回はモリモトの2物件で受賞ということですが、ご感想はいかがですか。
「ありがとうございます。とてもうれしく思っています。今まで自分が建築や住空間づくりについて、考え、実践してきたことがグッドデザイン賞という形で評価していただけるということは、少しは世の中の役に立つことができたかもしれない、やってきたことが間違ってなかったかもしれないと素直に喜んでいます」
こうした受賞はキャリアの中でも大きな意味を持ちますか。
「そうですね、何しろ励みになりますし、評価をいただいたわけですからこれを機にもっと頑張ろうと、これからも良い生活環境を目指して頑張ろうと、本当に思いました」
建築を通して都市に向き合っていくことを
いつも大切に考えている
受賞作品についてうかがっていきたいのですが、「カスタリア大塚」は、
バルコニー面のデザインが特徴的なワンルームマンションですね。
「この物件はデザイン監修という立場で手がけたのですが、とにかく単調な構成を避け、街の風景として魅力的なものにしたいと思いました。たまたまセットバックに対して余裕があり、バルコニーがしっかりとつくれたので、バルコニーをセカンドルームというイメージで、外部との境界面を家具のようなスケールで分割する手法を採り入れています。ランダムなRCリブ格子が外から見たときに住戸単位を曖昧にし、それらはカウンターやベンチ、ディスプレイ棚などに利用できるようにしています。
この半屋外空間を住む人に利用していただくことで、生活の断片が外から垣間見え、人の営みのエネルギーが街へ放たれていきます。人の生活に合わせて少しずつファサードがつくられていくイメージです。もともとモダニズムはヒューマニティを大切にした考え方。今はそこがやや欠落しているから、街の表情がさびしく無機質になっている気がします」

下吹越 武人(しもひごし たけと)
1965年生まれ、’88年横浜国立大学工学部建築学科卒業、’90年同大学院終了、北川原温建築都市研究所を経て、’97年A.A.E設立。現在、法政大学、明治大学、早稲田大学芸術学校非常勤講師。’05年日本建築学会作品選奨、第2回和歌山市優良建築物受賞。’04年度グッドデザイン賞受賞。 |
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もうひとつの受賞作「Qiz青山」は、鏡面パネルなどのアイディアが光る商業テナントビルです。
住宅とはやはりアプローチの仕方が違うのでしょうか。
「そうですね、まずこうしたビルの場合は事前にどんなテナントが入るかわかりません。逆に言えば、どんなテナントでも入れるように設計しなければならない。住む人の属性がある程度予測できる住宅とはそこが大きく違います。対象が見えないというのは、設計者の立場からすると、これほど困ることはありません。でも良い風景や環境は建築家以外に誰がつくるんだ、という強い気持ちはありましたね。 そこでテナント云々と考える前にこのビルが街とどう関わりを持つかという視点に立ってみました。利用する人が見て、街を歩く人が見て、共に創造力が沸くような場をつくりたいと思いました。例えば軒天の鏡面パネルで内の様子を、外の風景を映し出すアイディアはここではじめて実践したものです。建築が人々の活気を媒介していくことで、きっと街に良い影響が与えられると考えました」
下吹越さんが建築を手がける際に、建物の形態を問わず、大切にされていることは何でしょう。
「私は都市や街のことを考えるのが好きで、よく都市計画と言われてもそれはインフラ整備のことを指すことが多い。でも実際はひとつひとつの建物の集合体が都市になっていて、自分たちのリアルな蕫都市﨟というのは建物の集合体なんです。だから常に建築で都市体験に向き合うことを大切にしています。建物単体で完結するデザインではなく、その建物が街にどう影響を与えるかを考える。本来の街づくりはそうして形成されていくべきだと思っています」
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