新築マンション 株式会社モリモト 2007年度グッドデザイン賞

新築マンション 株式会社モリモト

―2年連続のグッドデザイン賞受賞、おめでとうございます。

「おかげ様で、モリモトさんの物件で2年連続受賞となりました。プロジェクトごとにその都度何ができるかを考え、一つずつ積み重ねながら作っていますので、賞をいただくということは、考えてきたことや新たな取り組みが評価されるということですから光栄ですし、嬉しいです」

―今回のグッドデザイン賞のテーマは〈デザインの引力〉ですが。

「“イプセ学芸大学”では、西側は低層住宅が建ち並ぶ住宅地、東側は幹線道路に面し交通量が多く、居住環境としてはネガティブなイメージを持たれ、その異なる環境の建築的な解決が求められました。立地を入念に読み込むと、固有の環境に呼応したプランがどうしても必要でした。 幹線道路に面したファサードはクルマのスピードに負けないよう、間口一杯に伸びる力強い水平ヴォリュームの積層を表現。一方、住宅地側はワンルームのユニットを単位とする端正なグリッドフレームでデザイン。また、この敷地は尾根上にあり、両側が谷状となっているため住戸内から空への広がりを遮るものが何一つありません。そのため、とくに留意したのが窓際のデザイン計画でした。一般的には閉じてしまいがちな幹線道路側は、道路側に16mもの間口を持つワンルーム住戸を配置。居室からバルコニーまで連続する出窓状の横連装窓を設置し視線から道路の喧噪を遮り、都心の風景を一望できる開放的な空間としました。また短冊形のワンルームは、インフレーム逆梁構造とすることにより、梁型と上階スラブが視界を遮らないため空が広がるとともに、奥隅まで陽光が届き、かつスキップバルコニーにより家具を配置しても採光を妨げないため、生活スタイルの自由度をより高めることができる空間としています。  南の住宅地側には60戸と住戸のほとんどを配し、幹線道路側には特殊な形状ながら魅力的な8住戸を配したプランは、立地条件をデザインが補完したという意味で、まさにデザインの引力と言えます。デザインは、表面的なことだけではなく、そこに住んでいる方が自分たちの豊かな生活をイメージするときに、有効な力を持っています。デザインの引力のもうひとつの意味は、居住者が生活に抱く想像力に働きかけるような住宅の作り方、もしくは建築の質であると言えるのかもしれません」

―ワンルームの居住性を高めた具体例をもう少しお聞かせください。

「都会での生活であるからこそ、自然を取り込むのは大切な要素です。ワンルームタイプでは、オリジナルタイルによって居室からバルコニーへと外部への繋がり感を居住者に持たせるよう演出。メゾネットタイプでは、室内にインナーテラスを設け、室内にいながら“外”を感じる空間を実現。これによって社会や地域と繋がる生活拠点とすることができます。地域に根ざしたワンルームマンションになれば素晴らしいと思います」

―どんな空間が理想ですか?

「住む人がもっとも居心地がよくて自分を取り戻せる、自分に素直でいられるような住宅です。僕は居心地のいい場所というのが、もっとあるはずだとずっと思っていて、建築をすることでそれを探しているような気がします。人の生活、住まい方の可能性の幅が広がる住宅を作っていきたいですね」

グッドデザイン賞受賞 建築家

下吹越 武人TAKETO SHIMOHIGOSHI

1965年生まれ。'88年横浜国立大学工学部建築学科卒業、'90年同大学院終了、北川原温建築都市研究所を経て、'97年A.A.E.設立。現在、法政大学、横浜国立大学、早稲田大学芸術学校非常勤講師。'05年日本建築学会作品選奨、第2回和歌山市優良建築物受賞。'04年度・'06年度グッドデザイン賞受賞。

間口一杯に伸びる力強い水平ヴォリュームの積層。

左:ワンルームのユニットを単位とする端正なグリッドフレーム。
右:ガラスが自然光をたっぷり取り入れる明るく開放的なエントランス空間。

左:オリジナルタイルを使用したワンルームタイプ住戸。
右:室内にインナーテラスを設けたメゾネットタイプ住戸。

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―グッドデザイン賞を受賞されたご感想はいかがですか。

「今回は、高階高という住居の立体化ユニットの提案です。ずっとやってきたことを認めていただき、入居された方にも喜んでもらえて、そして専門家の方からも評価されたということは大変うれしく思っています」

―今回のグッドデザイン賞のテーマは〈デザインの引力〉ですが。

「“イプセ新丸子”は3つのユニットで構成されています。UNIT-Bは階高4.2m、専有面積24m2という1.5層のユニットが大きな特徴です。ロフトの天井高は1.4m、キッチンは2.09mですが、リビング・ダイニングは3.8m弱を確保しました。ここでは、機能的な空間からリビング・ダイニングに移動したときの空間の広がりの驚きを感じてもらいたいと考えました。1.5層の高さをうまく利用して24m2ながら、使い勝手や機能によりそれ以上に感じるという、縦方向の空間の価値創造でしょうか。普通は、何m×何mの何畳という概念ですが、そこに3.8m近い空間が存在することで異次元の広さを感じる。空間の大きさ、空間の広さに高さを加えることで増幅される空間の力が、デザインの引力と言えるのかもしれません」

―現地をどのようにとらえましたか。

「堤防を越えると多摩川ですが、ここは川だけではなく、川越しに田園調布の森が見え、さらに森越しに都心の夜景も見える。都市にいながら自然を感じ、やすらげる景観をインテリアとして取り込める場所です。バルコニーは奥行き1.5m、しかもこの建物の場合は、共用廊下の方に機械設備を入れたために、バルコニーを広く使うことができる。逆梁にすることで空までの開放感も手に入りました。室内のフローリングの延長としてデッキがある。内と外がバルコニーで繋がり、数値以上の開放感を感じるのではないでしょうか」

―1部分を1層以上にするということはこれまでもやられたことですね。

「容積という条件の中で最大限できることは、空間のヴォリュームを取ることです。ワンルームという空間を考えると、僕は提供する空間の特徴は明確に打ち出した方がいいと思い、立体化ユニットを考えました。今回は24m2という空間の中に、1.5層をバランス良く取れたために、24m2とは思えない空間ができたのだと思います」

―収納はどう解決されましたか?

「収納というと女性誌にあるように工夫した収納空間に隠すというような発想もありますが、今回は見せる収納、飾っておける空間という考え方を採用しました。隠すものと見せるものをいかにバランスよく作るか。僕の場合、隠すというのは細かい造り込みを行うのではなく、目線から外すとか距離感を置くという考え方で解決しています」

―これからどんな空間を作りたいですか?

「これからは、空間の量そのものが増えてくると思います。そのときに住まい手が自分の手を掛けて、いろんなスタイルを作っていきやすいものがいいんじゃないかと思います。こちらからはスケルトンを提供して、中の味付けは住まう人が作っていく。ないがしろにされてきたプライベートな空間が、少しずつその領域を広げてきたように、居住する人の創造性を発揮出来るような空間を作りたいと思います」

グッドデザイン賞受賞 建築家

谷内田 章夫AKIO YACHIDA

1951年生まれ。'75年横浜国立大学工学部建築学科卒業、'78年東京大学大学院池辺陽研究室修士課程終了。'78年ワークショップ設立(共同)、'95年谷内田章夫/ワークショップ設立。'02-日本女子大学家政学部、日本大学生産工学部非常勤講師。’93年「保谷本町のクリニック」で第11回吉岡賞、'96年「野田市兵衞商店/BRIDGE」で第2回くまもとアートポリス推進賞受賞(以上ワークショップ共同作品として受賞)。

多摩川沿いというリバーフロントの魅力を最大限取り込むプランニング。

バルコニー側に、4.8mという2層分の天井高を持つリビング空間を配したUNIT-B。

ベットをロフトに配置すれば衣・食を分割することができる。

左:キッチン上がロフト、浴室下が収納スペースとなる。

右:約3.1畳の広さのキッチンの上部には、玄関通路の上部、浴室・洗面部分の下部同様、専有面積にカウントされない0.5層の空間を設け、開放感を確保している。

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2004年度グッドデザイン賞受賞
ネクストフォルム西麻布
 
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